財産分与

離婚する際、財産分与の対象になる財産とは?

この記事でわかること
  1. 財産分与の対象となる財産とは?
  2. 財産分与の対象となる財産(婚姻後に貯めた預貯金や購入した不動産)が全て夫名義の場合でも財産分与の対象となるのか?
  3. 自宅マンションの購入費用の一部に、財産分与の対象とならない財産(独身時代の貯金)が充てられていても、自宅マンション全てが夫婦の共有財産として扱われるのか? 

【事例】

私は、夫と結婚して10年になります。 
私は、現在専業主婦で、夫は会社員です。 
今回、夫と離婚することになりました。 
そこで、夫と財産を分けることにしたのですが、なかなかまとまりません。 私たちの財産として考えられる財産は、次のものが挙げられます。 
・私の独身時代の預貯金(A銀行に金100万円) 
・私が婚姻後、私の父の相続に伴い取得した預貯金(金1000万円) 
・夫の独身時代の貯金(B銀行に金300万円) 
・婚姻してからの預貯金(C銀行に金500万円。口座の名義人は夫) 
・婚姻後購入した自宅マンション(夫名義。2500万円で購入したが、現在は1500万円の価値。残ローンなし。) 

Q1 財産分与の対象となる財産とはどのようなものでしょうか? 

 結論から言えば、 
・婚姻してからの預貯金(C銀行に金500万円) 
・婚姻後購入した自宅マンション(夫名義。2500万円で購入したが、現在は1500万円の価値残ローンなし。) 
が財産分与の対象となり得ます。 

 はじめに、夫婦の婚姻前に有する財産や自己の名で得た財産以外を除き、夫婦で得た財産(夫婦のいずれに属するか明らかでない財産を含む)については、夫婦の共有財産とされます(民法762条)。 

 すなわち、現在、存在する財産から夫婦の婚姻前に有する財産や自己の名で得た財産(=夫婦の特有財産)を除いた財産が、財産分与の対象となります。 

 今回の事例でいえば、次の財産は、財産分与の対象にはなりません。 
・独身時代の預貯金(A銀行に金100万円) 
・私が婚姻後、私の父の相続に伴い取得した預貯金(金1000万円) 
・夫の独身時代の貯金(B銀行に金300万円) 

 今回の事例に挙げた財産以外にも、よく財産分与の対象かどうか問題となる例としては、車や生命保険の解約返戻金、学資保険等があります。夫婦それぞれ財産のあり方があるかと思いますので、財産分与を取り決めるにあたっては一度弁護士にご相談されることをお勧めします。 

Q2 財産分与の対象となる財産(婚姻後に貯めた預貯金や購入した不動産)が全て夫名義です。この場合、夫の財産といわれてしまいませんか? 

 結論としては、夫の名義であろうと、夫婦で協力して取得した財産であれば、財産分与の対象となります。 

 確かに、夫名義ではあるので、一見夫婦の共有ではなく、夫の財産のように見えます。 

 しかし、婚姻中に夫婦が協力して取得した財産であるのに、名義が夫婦の一方であることだけを理由に夫婦の共有ではないとしてしまうと公平を欠きます。そこで、対外的には名義人の特有財産といえども、夫婦が協力して取得した財産であれば、夫婦の間では、夫婦の共有財産として財産分与の対象とされます。  

 なお、夫婦が協力して取得して財産かどうかは、通帳の記載(婚姻後に入金されたものであるのか)や、不動産登記(婚姻後に購入されたものであるのか)等が手掛かりの一つになるでしょう。 

 もっとも、名義が夫婦の一方である場合で当該財産が夫婦が協力して取得した財産であるかどうかの判断は難しいかと思いますので、一度弁護士に相談されることをお勧めします。 

Q3 自宅マンションの購入費用の一部は、私の独身時代の貯金が充てられています。この場合であっても、自宅マンション全てが夫婦の共有財産として扱われるのでしょうか? 

自宅マンションの購入費用の一部が、独身時代の貯金から捻出されているなど、一部の支払いが特有財産が充てられている場合は、自宅マンションの一部については特有財産とされます。 

この場合の計算方法は複雑なので、一度弁護士に相談されることをお勧めします。