養育費

養育費を大学の学費分多くもらうことはできないか?

この記事でわかること
  1. 養育費は、子どもが何歳になるまで支払う必要があるのか?
  2. 大学への進学を理由に養育費の金額を多く支払ってもらうことはできるか?

【事例】

私は、4年制の大学を卒業したのち、市役所に勤務しています。年収は、300万円程です。 
夫は、4年制の大学を卒業したのち、高校の教師をしています。年収は、850万円程です。 

私たちには、長女(23歳)、長男(17歳)の二人の子どもがいます。 
長女については、大学を卒業後、会社勤めをしていて、一人暮らしをしています。 
長男については、現在私立の中高一貫校に通う高校3年生で、大学受験に向けて勉強しています。 

私たち夫婦は、この度離離婚することになり、長男の親権については私が獲得する予定です。そして、養育費について夫と話合いをしたところ、「養育費については、長男が20歳になるまでは、支払うがそれ以降は支払わない」と言われてしまいました。 

長男は、大学進学予定で、22歳で卒業するまでは、就職する予定はありません。私だけの収入では、20歳以降の学費を全て負担することは難しいです。 

夫に、長男が大学を卒業するまでの養育費を支払ってもらうことはできないのでしょうか? 

Q1 養育費は、子どもが何歳になるまで支払う必要があるのか?

 養育費は、子どもが未成熟子ではなくなったときまで支払うとされています。 

 民法改正で子の成年年齢が、20歳から18歳に引き下げられましたが、裁判所では原則、満20歳までとしているのが一般的です。 

 それでは、今回の事例でいえば、夫の主張どおり、養育費は20歳になるまでの分しか支払ってもらえないのでしょうか? 

 裁判例の中には、親の収入や、家庭の教育水準(両親、兄弟が大学に進学していることや、大学に進学する予定の子が進学校に通っていること等)を鑑みれば、卒業まで子を未成熟子として扱うことを認めているものがあります。

 したがって、今回の事例でいえば、両親や長女が大学を卒業していることや、長男も現在進学校に通っていること、両親の収入に鑑みれば、長男が大学を卒業するまでの間は未成熟子として扱い、22歳までの養育費を負担すべきと判断される可能性は十分にあります。

 先に述べたように、20歳以降の養育費の請求(分担)については個別具体的な事情に沿って検討する必要があります。 

 したがって、今回の事例のように20歳を超えた子の養育費の請求(分担)についてお悩みの方は、一度弁護士に相談されることをお勧めします。 

Q2 算定表を超える養育費の支払いを求められるか。

【追加事例】

夫は、養育費を22歳まで払うことに納得してくれました。 

しかし、金額としては、裁判所のHPに掲載されている『養育費・婚姻費用算定表』で計算された金額(今回の事例でいえば6~8万円)であれば払うが、それ以上については支払わないと言われてしまいました。 

長男は、私立の大学への進学が決まり、4月からは一人暮らしを始める予定です。そのため、この金額では到底足りません。もう少し増額してもらうことは出来ないのでしょうか? 

 教育費については、支払いの義務を負う義務者が承諾している場合はもちろんのこと、義務者の収入や学歴等を考慮し、その教育費負担が不合理でない場合には請求できます。 

 ただ、養育費の中に一定の教育費も含まれているため、実際に必要な教育費がその金額を超える部分については、両親で分担するということになるでしょう。
 例えば、算定表では、 基礎収入の算定において公立高校を前提とする標準的学習費用(教育費)として年33万3844円を要するものとして予め考慮されています。 

 事案によって結論は変わりますが、今回の事例でいえば、長男の大学の学費分については、養育費で考慮されている教育費を超える金額部分については、両親で分担すべきであるという結論になりそうです。 
 そのため、相談者は、夫に対して、通常の養育費に、夫が負担すべき大学の費用部分を上乗せした金額の支払いを求めることができそうです。

 ところで、一人暮らしの費用(下宿代)については、養育費の中には含まれていません。そこで下宿代の分担を求めることができるかという点については、一人暮らしが必要なのか否かによって、結論が左右する可能性があります。 

  そのため、長男の一人暮らしの費用について、夫に一部負担を求められるかについては、一人暮らしが必要なのかという点からもう少し事情を聴いてみる必要があるでしょう。 

 養育費を大学の学費の分、少し増額できないかという点についても、Q1の検討と同様に、大学の学費等個別具体的な事情を踏まえて検討すべき事項です。 

 したがって、Q2のようなお悩みを抱えている方は、一度弁護士に相談することをお勧め致します。